2012年4月7日土曜日

ちょっと前の話になるけれど、クイズ形式のテレビ番組を見て「あれ?」と思った。
話をする上で隠してもしょうがないのではっきり言うが、
世界一受けたい授業
http://www.ntv.co.jp/sekaju/
という番組。テレビはあまり見ないのだけど、何となく見たいな、という時にあっていたら見てしまう番組で、面白いと思う。

それで、「あれ?」と思ったのは、3月17日放送の最後の方の問題でのこと。
五角形の図形が書いてあって、「直線を1本加えて三角形2つにせよ」というもの。
文章だけで「はぁ?」と思うのだが、番組ホームページを見てみたら復習ということで掲載されていた。
7限目【能力開発】 多胡 輝 先生
http://www.ntv.co.jp/sekaju/onair/120317/07.html
の一番下。

とんちが好きな人は一生懸命解いてもらうとして。
答えを見るとびっくりする。
「太い直線を1本引く」

五角形の5つの角のうち3角が隠れるほどの太いまっすぐな線を、ペンキを塗るようなハケ等で書くのが正解だそうだ。

この段階で、違和感を覚える人と覚えない人に分かれると思うのだけど、その分かれる原因は「直線とは何か」ということ定義を知っているかということだと思う。

直線とは

  1. 太さを持たず
  2. どこまでも無限に伸びる
  3. まっすぐな

線です。

これを踏まえて「太い直線を1本引く」という答えを検討すると、「1.太さを持たず」なので「太い直線」は存在しません。ハケで書いた線は始まりと終わりがあるので、「2.どこまでも無限に伸びる」直線ではありません。「太い直線を1本引く」という答えは、あり得ない物を要求しています。

「また小難しいこと言い出して数学オタクか、うるせえ」という人もいるかもしれません。でも、直線の定義は中学校の数学で習うこと。極論すれば日本人の常識。つまり、義務教育をおえた日本人なら「太い直線を1本引く」ことが不可能なのは、誰でも分かることなんです。

「いやいや、とんちだよ、目くじら立てるなよ」という人もいるでしょう。ごもっともです。でも、ここは引かずに・・・

私たちは言葉で意思疎通を図っています。ならば、言葉に関して、仕事、趣味、私生活などのあらゆる場で「そんな意味で言ったんじゃない」という経験があるのではないでしょうか。その原因はさまざまでしょうが、「言葉の意味の捉え方が人によって異なる」ということが主因だと私は考えています。

「捉え方」というのは、意味そのものであったり、範囲であったり、軽重であったり。異性に「好き」いわれてドギマギしたけど、「友達として好き」だったみたいな・・・「言葉の捉え方」の個人差もその程度ならいい。「好き」の意味が違っても落胆しとけばいいし、挽回のチャンスもあろう。

ただ、科学的な分野になるとそうはいかない。「放射能」と「放射線」、化学の「陽イオン・陰イオン」と電化製品の「プラスイオン・マイナスイオン」、「震度」と「マグニチュード」。間違うと大変な物、経済的な不利益を被る可能性のある物、いろいろである。下手すれば健康や生命に関わりある。もしものときの情報伝達に「言葉の捉え方」の曖昧さが入り込んでは困る。

だから、「言葉の定義」というものはとても大切にしなければいけない部分だと思う。今の日本社会は科学に立脚して成り立っている。なので、せめて科学に定義のある言葉は大切に使いましょうよ、と思うのです。言葉が混乱して困るのは自分たちなんですから。

今回の問題であれば、「まっすぐな線を一本加えて」とすればなんでもなかったこと。正解率を下げたかったのか、解答する人に頭を使わせたかったのかは分からないが、直線の定義を理解している人には不要な混乱を招き、そうでない人には誤った定義を植え付ける設問になったのだろうと感じた。

社会教育という分野に片足つっこんで仕事しているので、どーしても気になったんです。