天草市は、「全島博物館構想」というのを進めていて、「天草全体を丸ごと大きな博物館としてとらえ、地域振興や観光振興等とも連携して資料館活動を行っていく」としています。五和歴史民俗資料館もそのネットワークに入っている資料館の一つのようです。
いるかウォッチングが行われる通詞島にあります。いるかウォッチングなどで訪れた際には、ちょっと訪問してみると良いかもしれません。
場所は、天草宝島観光協会のページを参考にして下さい。地図もあり、見やすいページです。
さて、いきなり外観を撮影するのを忘れてしまいました・・・
中に入ると職員の方が出てこられて、館の説明をして下さり、解説が必要かたずねて下さいました。ありがたく解説をお願いしました。ついでに写真撮影の許可をお願いしました。以前は、「基本禁止」「2枚まで」とか制約があったようですが、今は「ブログなどで紹介する目的でしたらOK。宣伝にもなるし」とのことでした。 パシャパシャ
入口からの通路の右手にあるのは、たくさんの餌木。イカやタコを釣るためのものだそうです。地元の漁師さんが実際に使うもの、使うために作ったものを、用途別、形別に並べて展示品にして下さったそうです。
![]() |
漁師さん自らが使われる道具を並べたもの |
![]() |
貝の生息環境のジオラマ(左)と貝の展示(右) |
入口からの通路を突き当たり右にある展示室は、イルカ・クジラの展示室。今でもイルカウォッチングが盛んな通詞島、むかしからイルカやクジラが近づき、時には浜に打ち上げられていたようです。この窓からは海が一望でき、運がいいとイルカの泳ぐ姿も見ることができます。
![]() |
イルカ・クジラの展示室 |
室内には、鯨類についての解説はもちろん、部屋のまん中には骨格標本があります。かなり間近でゆっくりと見ることができます。
上段はオキゴンドウ(だったかな・・・)、下段はバンドウイルカだそうです。
![]() |
イルカ・クジラの展示室の中央におかれた骨格標本 |
イルカ・クジラの展示室のお向かい(入口から続く通路突き当たりの左側)は、歴史の部屋、主に縄文時代の資料があります。何でも通詞島に水道鏡をかける時に、人骨を含んだ縄文遺跡が出たそうで、それらの資料が中心でした。
縄文時代、この辺りでは製塩が盛んだったようです。製塩に使われた土器が大量に出て来たそうです。写真は製塩の様子を再現したもの。こうして作った塩は重要な交易品でだったようです。この地方ではとれない黒曜石の鏃なども出土していて、もしかしたら塩と交換して手に入れた黒曜石なのかも知れませんね。
![]() |
製塩の様子の復元 |
出土した人骨の状況や一緒に出土した装飾品などから、当時の暮らしなども語られています。
![]() |
人骨が出土した状態の写真もある。 |
いろんな動物の骨や歯で作られた装飾品や道具なども多く展示されていた。写真中央の勾玉は、イノシシ、ツキノワグマ、クジラの歯、シカの角で作られている。当時は天草にツキノワグマがいたのか?それとも九州本土との交易で得たもの?左上は貝で作った腕輪。相当小さいので、子どもの時にはめて、そのまま一生外さなかったのではないか、という職員さんのお話でした。
![]() |
勾玉や腕輪など |
![]() |
装飾品や針入れ |
骨でいろんなものを作っていたんがなぁと感心しつつ、次は釣り針。やはり、海沿いの遺跡ということで、漁労が盛んだったようです。しかも結合式なんて・・・相当でかい魚をつるんだろうな。
![]() |
結合式釣り針。針先を鋭く保ち、根元を丈夫にする工夫かな? |
さてお次は雰囲気が変わって、民俗学の部屋。ちょっと昔のくらし道具、といったところ。海辺の町なので、基本的に漁業道具の紹介が基本。地元の漁師さんが随分と協力されているのではないだろうか。
![]() |
民俗学の部屋。漁具いろいろ。 |
現在の釣り針が並べてあった(あガラスに反射して自分が映ってる。やだなぁ)。縄文時代と比べ、素材は金属に変わり、金属を自由に加工して繊細なものから強靭なものまで用途(対象魚)に応じて作る技術が発達している。一方、基本的な形/デザイン(ひらがなの「し」型で先端に返し)は、縄文時代から全く変わっていない。この形を発見・発明した縄文人は素晴らしいな、などなど。
![]() |
今の釣り針 |
釣りだけではなく、突鉾漁、潜水漁も行われていた。その道具ももちろんある。
![]() |
潜水漁などのコーナー |
潜水漁で欠かせない水中眼鏡もいろいろ。いろんなタイプがある。日々改良したり工夫したりしたのだろうか。
![]() |
水中眼鏡いろいろ |
さらには船を造る道具まで。船大工というものか?古文書なんかもある。私は全然読めないけど。
![]() |
船を作る道具 |
かなりざっとですが、展示室はこんな感じの3構成です。考古、民俗のコーナーは資料も多く、見応えがあります(写真で紹介したのはもちろん展示の一部です)。職員さんは特に考古に通じている方らしく、いろいろと詳しく解説してくださいました。
自然分野が少ないですが、まあ、それは「歴史民俗資料館」だからしようがないといえばしようがない。しかし、イルカ・クジラの部屋には解説パネルもあり、貝の展示もあり、目の前の海に興味を持つことができます。
決して大きい施設ではないですが、楽しめた場所でした。