2019年9月22日日曜日

[最近読んだ本]毒グモ騒動の真実

別ブログに上げていた本に関するコンテンツを移行したものです。
オリジナルは2013/06/01公開

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 昨年度から、仕事で外来生物について扱うことが多かったので、興味を持って読んでみた。

 関西地方を中心に広がっているオーストラリア原産と言われる外来生物で、外来生物法でも特定外来生物に指定されている「セアカゴケグモ(注*リンクは環境省のpdfファイルです)」についての本だが、書名が示すように、セアカゴケグモの生物学的な本ではなく、セアカゴケグモの侵入の確認から始まった人間側の「騒動」について示してある。「おわりに」にもあるが、騒動の真実・事実を記録し、検証し、さらには次に同様の問題に突き当たった時に対策を講じることができるように、という目的で編まれた本である。

 個人的には、本の前半にある、セアカゴケグモの発見から、確認、そして発表までのいきさつについての部分を興味深く読ませてもらった。博物館や友の会、民間の団体、学会などが互いに協力・調査し、人々により正しい情報を伝え、人々がより適切な対応をできるよう努力している様子が印象に残った。

 報道が必ずしもこちらの意図通りに情報を流さないことの内情のようなものにも触れており、これからの情報の受け取りや発信にさいする心構えになるな、とも感じた。

 報道の問題も関係しているが、セアカゴケグモがどれほどの毒グモか、ということの説明に多くのページが割かれている。一読すると、テレビや新聞が伝える毒グモの評価が如何に危ういものか、正しい知識を持ち自分で確認・検証することが如何に大事か考えさせられてしまう。

 もちろん、セアカゴケグモの生物学的な情報や侵入の状況、広がり方などにも触れており、私がいる熊本県もそのうち入ってくるんじゃなかろうか、という印象を受けた。また、「外来生物としてのゴケグモとのつき合い方」という章がある。この章はゴケグモという外来生物にどう向き合っていけばよいか、というだけではなく、外来生物全般と私たちがどうつき合っていくかを考える良い指針となるのではないだろうか。